生掛け

生掛け

床の間に穴を開けて外の景色を掛け軸に見立てる。そうした生掛けに私は京都の鹿苑寺で接したことがある。

鹿苑寺の舎利殿はかの有名な金閣で、池の水に浮かんだ姿を母屋から眺めるのが最高といわれている。正客の席に座ると生掛けをとおして金閣が見える。金閣を眺めての茶会は足利時代の文化人たちの楽しみだったのだが、私も縁があって、ある人のお茶会に招かれるという幸運にめぐり合わせた。

適された母屋の座敷の生掛けから、夕方から夜にかけての時間の流れにつれて景色が刻々と変化していくなかに金閣が浮かび上がって見えた。風流の真髄を感じた。

生掛けは大事なお客様への最高のもてなしである。普通のお客様の場合には本当の掛け軸をかけて、生掛けは隠しておく。

生掛けは三六五日、二四時間、絵が変わるのである。

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